ヒロイズム完全欠如のカタルシス

 ずーっと見れなくて悶々としてた。やっと見たっ!

 
脳男 

 原作は乱歩賞を取った直後ぐらいに読んで、その時も
かなり「燃えた」のだけれど、今回の映画版は正直、
もっと燃えた。
 原作の仔細はもう殆ど忘れていて、主人公?の脳男が
「感情のない人」というぐらいしか覚えてなかったのだ
けれど、これはかな換骨奪胎しているんぢゃないだ
ろうか。少なくとも今回の映画版の脳男の敵/ターゲ
ットの既知外女子二人組は映画オリジナルだと思うのだが、
脳男・自称鈴木一郎がケタ違いの存在であることを言う
ための比較対象としては機能していたと思う・・・・まぁ、
サイコサスペンスによく出てくるタイプではあるけれど。
原作をちゃんと覚えている人の感想を読むと「あんな
展開じゃねぇし、映画版はステレオタイプに堕ちている」
という意見も在るのだが、邦画・・・・というより現在、やや
乱造気味の洋画のサスペンスアクションと比べても見劣り
しないというか見応えがあるんぢやないかと個人的には
思ったりしたのだけれど。
 今まで色んな意味で「はみ出してる役が多かったよう
に思う二階堂ふみが真正面から既知外を演じたのはついに
来たかという感じだった。
 「悪」に裁きを下さずにはいられない、というか
その為だけに存在するという言わば究極ヒーローな
脳男なのだが、正義をむやみに貫いても時々『相棒』
杉下右京がやらかす後味の悪さが残るだけみたいな
ことになる所に、無遠慮の暴力が加わってくると物語
としては何か突き抜けてしまって、不謹慎だけど楽しく
なってしまった。その辺りをあまり深刻に感じさせない
話の展開の作り込み方も巧いと言えば巧い。まぁよぉく
考えると『悪魔の毒毒モンスター』と根本的に同じ
ぢゃねぇかともちょっと思ってしまったが。
 難点を敢えて挙げるとすれば、脳男の出生の秘密
の解明を非常に丁寧に描写していたこと。まぁ原作
でも此処は重要な部分だし、映画版でも此処をしっかり
説明しとかないと全体の説得力が無くなってしまう
のだが、こういう、徐々に徐々に謎がほどけて
いくような展開というのは小説で読むとムチャ
クチャわくわくしてどんどんページが進んで
面白いのだ。ただ、映像にするとややもすると
淡々とした流れになってしまう。まぁ今作は
内容(ネタ)の面白さで見せきったけど、この
バランスは難しいなぁ。この下りを削れば、
脳男がどうやって既知外女子2人組までたどり
着いたのかといった「脳男の感情のない捜査」にも
時間を使えたと思うのだけど・・・・。まぁそれを映画と
して面白く描けたかはまた別問題だけど。
 ともかく、現時点で今年劇場で見た映画
ベスト5に入れるっ、
絶対入れる!