やっぱり『ロープ』が好き

 アルフレッド・ヒッチコック監督の作品の中で、
結構『ロープ』が好きだったりする。(見た目で)
物語本筋の冒頭からラストまで、一度もカットが
切り替わることなく、あたかもビデオカメラを
ずーっと廻しっぱなししたような映像が続く作品
である。映画内の時間が実際の時間経過と同時進行
で進むのである。ヒッチコックの作品中で、必ずしも
評価の高い作品ではないようだが、死体の入った
チェストが置いてある部屋でパーティを開く犯人
イカレた論理とその崩壊っぷりを「リアルタイム」
で描くこの作品はヒッチコックらしいなぁと思う
のである。
 

 
 勿論、この映画が制作された1948年にはビデオ
カメラなど全然普及していなかったし、約80分もの間
フィルムカメラを回しっぱなしなど出来ない。そもそも
そんな長いフィルムは昔も今も存在しない。
 カメラの前を人がよぎったり登場人物の背中にアップ
していったり、家具の裏側にカメラが廻り込んだりする
時に、巧みに一度カメラを止めてフィルムチェンジして
いる。
 勿論、現代では映画の本編分まるまるをビデオカメラ
で撮る事は物理的には可能だし、後からデジタル処理を
加えれば理論上はどんな映像でも作れる。それを、実際
に一発撮りでやってしまったのが本作だ。
 

 三谷幸喜大空港2013


 三谷幸喜の作品を全て見ている訳ではないけれど、
やっぱり猫が好き』とか大河ドラマ新撰組!!』#5
「婚礼の日」とか『ラヂオの時間』とか『古畑任三郎』内
で所々にあるような、ひとつの部屋とか一軒の家屋の中で
登場人物たちが右往左往するという展開で進めるパターン
がある。そういえば今話題の?『振り返れば奴がいる』も
ほぼ、「病院の建物の中」だけで物語が進行していた。今
作はそういった展開が、地方の実際の小空港をロケ地にし
てでワンカット一発撮りで行われている。
 もう、この「形式」を実現したというだけで自分として
は満足である。と、いうか、物語そのものは信頼して?見る
ことのできる三谷ブランドのコメディなので、このワンカット
一発撮りの面白さに集中することが出来た。欲を言えば、
どうせならよりド真ん中なミステリかサスペンスをやって
くれたらもっと凄いと思ったとも思うのだが・・・・まぁ今作も
それらの要素はある意味ふんだんに在ったけれど・・・・今後に
期待したい。ワンカット一発撮りの『十二人の怒れる男
とか『オリエント急行殺人事件』みたいな作品が見たいぢゃ
ないですか。