見ている間の怖さは計り知れなかった。

 予告篇を見てから気になってしまって
公開早々に劇場に行ってみたものの、
最初の十数分ぐらいは「あれ?」だった
のだが。

 

 トム・アット・ザ・ファーム


 友人の葬儀に弔辞を述べに来た主人公。
だがしかし、その友人は実は同性愛の相手。
 息子を亡くした母親は、故人が言い逃れの
ために送った同僚女性の写真を見ながら「何故、
彼女は来ないのか」と嘆く。
 正直、見せ方によってはコメディにもなりそう
なシチュエーションで、ひとり切なく悶々とする
主人公のあれやこれやを見続けるのはキツいかなぁ、
と思っていると、故人が同性愛者だった事を知る
兄が強烈な存在感を伴って登場し、其処辺りから
物語は不穏なスピードを出していく。
 物語自体が何処に行くのか分らないのと、主人公
自身が徐々に壊れていくのが相まって画面の一秒一秒、
一瞬一瞬が緊張感に溢れだして、怖い。何が起こって
いるのか、恐らく観客が思うとおりなのだが明確に
は何も言ってくれない画面が怖い。
 王道にサスペンスフルな音楽が、王道にサスペンス
を盛り上げてくれて、怖い。
 上質のサスペンスという形容がピタリとくる。
 しかし此れ、原作の戯曲とラストが違うとは。
 戯曲ということでなんとなく予想もつくが其方も
見てみたい。