1935 > 1965?

 ヲタ趣味を持つ者の「共通現象」として、映像ソフトを
買った事で安心してそのまま放置、がある・・・・と思う。
 御多分に漏れず自分もそんなDVDをわんさか抱えている
のだが、これぢゃいかん、とばかりにまとめてかたずけて
しまおう^^;;;と、「ハマー・フィルム怪奇コレクションDVD-BOX」
で見ていなかった作品を見始めた。
 すると早くも2本目でいいようのない「事故った」感にブチ
当たった。
 いやいや作品が悪いんぢゃない、自分の感性の問題なのだと
思ったのだが、やっぱりなんだか違和感がある。それも其の筈、
この『燃える洞窟』('68)は『炎の女』('65)の続編なのだった。
しかもこの『炎の女』、日本国内ではソフト化されていない(現
時点で)。当然このBOXシリーズにもラインナップされていない。
 原作小説は日本でも出版されている『洞窟の女王』。イギリス
のファンタジー・冒険小説家H・R・ハガードによる作だ。ハマー
フィルムによる'65年の映画化作は大ヒットして、それで作られ
たのが『萌える洞窟』との事だが、実はこれ、原作の続編小説で
ある『女王の復活』とは別物。なんだか『らせん』と『リング2
みたいな話だ(こっちの方が先なんだけど)。
『燃える洞窟』自体が自分にはイマヒトツだった事もあって、
興味は一気に『炎の女』あるいは『洞窟の女王』へ。
 実はH・R・ハガードによる原作『She』(原題) の映画化は
ハマーが初めてではない。1935年にも映画化されている。
 そしてこの1935年版が、レイ・ハリーハウゼンの監修でカラー
化、BD化されていた。しかもこのカラー化の作業を行ったのは
数年前に『ウルトラQ』の総天然色化を手がけたlegendfilm社と
の事。無性に特撮ヲタクの血が騒ぐではないか。
 ほぼ迷うことなくBDを購入。アメリカで発売された商品だが、
BDのリージョンは日本と一緒なので視聴に問題なし。
さて、そうして1935年版カラー化作と1965年版を見比べてみた。
するとビックリ、「特撮作品」としては1935年版の方が見応えが
あるように感じてしまったのだ。
 '65年版はクリストファー・リーピーター・カッシングの両御大
が共演しており、二千年以上生き続ける女王アイーシャを演じた
のは初代ボンドガールを務めたウルスラ・アンドレスと今見ても
出演陣は豪華。ただリー、カッシング共に作品内キャラクターの
順列的に役を割り振られた感が在り在りで二御大の魅力を最大限に
醸し出しているとは残念ながら思えず、其処も『炎の女』が残念
に見えてしまう理由の一つだ。ウルスラ・アンドレスも正直な所、
あまり自分の好みではない。ボンドガールにしても個人的には
ロシアより愛をこめて』のダニエラ・ビアンキの方がゴツゴツ
してなくてよいと思う・・・・。そんな事はどうでもよいのだが、
'35年版もブロードウェイの美人女優ヘレン・ガヘーガンが映画
初出演との事なのだが、自分にとってはもう何が凄いのかよく
分らない。なので、純粋に?画面から受ける印象だけで見比べて
みた結果である。
 『洞窟の女王』オリジナル版は白黒で『炎の女』はカラーで
ある事が象徴的なように、普通に考えれば'35年よりも'65年の
方が撮影技術、特撮、映画制作の規模そのものも発達している
筈だ。
  『炎の女』は原作と同じく舞台をアフリカの奥地にしていて
砂漠でロケ撮影している(ようだ)。『洞窟の女王』はセット
撮影が多く、極地シーンはミニチュア使用やマット合成と思われ
るのだが、特撮好きの自分の心を揺さぶるのはどうみても35年版
だっだ。
  '35年版はスタッフに『キングコング』『コングの逆襲』『猟奇島』
に関わっていた者が居たからか秘境冒険物の再現とばかりに無国
籍風絶景が登場する。
 ただ、南洋の孤島を舞台にした作品ばかり?を作ってきた反動?から
か、'35年版の舞台は北の極地となっていて原作とは全く違う風景を作り
出している。前半の見どころ、大雪崩による氷山の崩壊シーンの迫力は
凄まじく、第二次大戦前の映画なのかと思うと感慨深い。
  原作では延々と続く超巨大な洞窟内〜一種の地底世界が舞台となって
いるのだが、'35年版の方がその地下世界の広大さを描き出そうとより
努力しているように見える。後述する女王の居処と同じく、スケール感
がより出ているように思うのである。


   


アイーシャが座る王座が在る広間のセットも、作画合成と思われるホール
状部分を含めて'35年版の方がゴージャスな雰囲気に見える。見た目上の
広さの桁が違う感じだ。’65年版は予算の関係なのか、あくまでも大きめ
のセットを使っての撮影、という感じに見えてしまう。

 

http://ekladata.com/o9952L1CU55KvQ9Phzyj59QmhlY.jpg
 
また、この時期の映画のスペクタクルシーンに度々見かける、巨大な舞台
装置のようなセットも『8時だよ! 全員集合』を見ていた自分にはなんだか
懐かし楽しい。

https://www.youtube.com/watch?v=0hKj1Vk9OwA#t=80m35s

  残念ながら両作とも原作の広大すぎるスケール感を完全に映像化出来て
いるとは言い難いし、国も年代も違う2作の制作状況や目指す方向性、何
を売りにしていたのか等、一律に比べる事は出来ないとは思うのだが、作
品の画面を見た時の意外性、スペクタクル感、興奮度など、特撮好きが
ワクワクする度合というのは「絵作りのセンス」とでもいうべきもので、
必ずしも時代の流れと共に進歩していくというものでもないと思うのであった。
 そしていつの間にやら見てないハマー映画を見る事から全然違うところに
行ってしまっているのだった。