やさぐれ感のその先にある鬼気迫るモノを醸し出す風格

 山田孝之といえば、すっかりうらぶれた印象が
様になっていて、個人的にはドラマ版『白夜行
武田鉄矢に追い込まれていく様子とドラマ放
送中に流布されたゴシップ?が妙にシンクロして
しまっており、『その夜の侍』での、おそらく
史上最低のクズ人間ぶりなどが実に決まっていた
のだが、その山田孝之が事件を追う記者を演じる
と聞いて「それ逆ぢゃね?」と最初は思ったのだ
が、本編を見てみてやはりこの記者役は適役だと
思った。

 

凶悪
 実際の殺人事件を描く所にも鬼気迫るモノが在って、
リリー・フランキーピエール瀧の、段々と人殺しが
日常茶飯事になって慣れきっていく様も恐ろしかった
のだが、それを追う山田孝之も段々とある意味おかし
くなって行き、同じような事件が起こりかねなくもな
い状況になるという、おそらく映画独自の展開だと思
う部分に山田孝之の「うらぶれ感」は絶対に必要だっ
たのだ。
 最近のアメコミ・ヒーロー映画は内省したり社会の
中での存在意義について揉めたりと「リアルさ」の出
し方についてあれこれ煩悶しているが、そんな物は軽
くフッ飛ばしてしまって、市井の人が正義を貫こうと
することの難しさ・危うさについてしっかりと描き出
している作品だと思う。 (まぁほぼ実話なんだからそ
ういう意味合いの部分は元来あるんだろうけど)