結構に三池汁が並々と溢れてるのにチャンバラ映画としても王道な、そんな感じ。の『十三人の刺客』


十三人の刺客
 いや〜しかしこれ、上品な予告だな^^;;; まーTV地上波で
流れた物らしいからなぁ。

 オリジナルは勿論、▲の、というより日本時代劇史上に残る
工藤栄一監督の作品。
 それを三池監督がリメイクするというんだから、期待しない訳がない。
 
 見事にやってくれました。
 オリジナルの骨子とストーリーの流れはほぼそのままに、より深く、
より容赦なく、よりエゲつなく、チャンバラ映画を再生してくれました。

 最近、『ゼブラシティの逆襲』なんかもそうなんだけど、Vシネで
哀川翔竹内力の『Dead or Alive』シリーズを撮ってた
頃の、いい意味でのムチャクチャさが一般メジャー作品でも見られる
ようになってきて嬉しい限りだったのだけれど、今作もそこかしこに
其処までやるかっ、という部分があり、でもそれは作品を壊すこと
なくむしろ必然に思えたりして、とても濃い二時間弱でありました。
 ・・・・前半の、あそこで役所広司が笑うか〜ってことなんだけど、
脚本の流れ、役所広司の役者のしての実力、撮り方も含めた演出が
相まって物凄いシーンになっていたと思う。あれ、下手にTVとか
でやるとクレームの嵐でしょう。
 オリジナルとの比較で・・・・といっても見返してないんですが--;;;
思ったのは、工藤版というのはなんというか、全体的に「上品」だ
と思う。武士の作法、武士の生き方死に方という「ルール」を受け
入れた上で、正に命を懸けた「試合/ゲーム」を行うという極めて
理知的な考え方のベースの上に建てられた物語だったなぁと。
 で、オリジナルは大ヒットしてその後、『大殺陣』『十一人の侍』
へと続くのだけれど、この二本には実は『十三人』の潔さ・高潔さと
いうようなものが無くて、武士として生まれてしまった不幸・非情と
いったものが前面に押し出されていて作風も何処か重くて、淀んで
いる(・・・・まぁ▲全体が時代劇より任侠・ヤクザ路線にシフト
していたということもあるのだろうけれど)。
 今回の『十三人』が凄いと思ったのは、オリジナル『十三人』の
高潔な人生ゲームといった趣は主人公の役所側に振り、『大殺陣
『十一人』の重苦しさをターゲットである悪ボスの人側(安穏とした
世界では生命感を感じることが出来ない「狂人」と、システムとして
そんな「殿」を守らなければならない家臣達)に振り分けて『十三人』
大殺陣』『十一人』三作を網羅した世界観を描き、更に伊勢谷友介
演じる武士でない13人目の視点をも組み込んだこと。そして冒頭の
「××より百年前の物語である」というテロップ表示でまた、それら
全てを冷徹に突き放している視点を提示しようとしていたこと。結局
どちらが正しいとも言ってないんだよねこれは。というか、この物語
で繰り広げられた愚かしさは日本人というモノの中に綿々と息づいて
おり、百年後の××投下という結果になったのでは・・・・って、娯
楽作のチャンバラ映画で其処まで言わないよな普通、というかそれも
三池汁。

 残念だったのは、チャンバラ映画であるからして当然、チャンバラ
をする人〜俳優に焦点を当てなければならず、必然的に宿場町一つを
まるまる改造したトラップが300人の敵を50人ぐらいに減らす
ためだけの使われ方になってしまったような気がしたこと。戦術的な
発想を徹底するなら、トラップ・仕掛けで持って悪ボスまで効率的に
やっつけちゃった方がいいのではと思ったんだけど、まぁ其処は江戸
時代の人の発想にはなかったということで。