もはや「芥川龍之介 原作」でもなんでもない『TAJOMARU』だけれど


 自分が好きな大河ドラマを3作上げろと言われたら、現時点では
躊躇なく、

 翔ぶが如く
 新撰組!

 そして
 花の乱

 を挙げる自分であります。次に続くのは『炎立つ』『山河燃ゆ』『功名が辻
北条時宗』『太平記』・・・・てな感じですか。まぁ全作しっかり見ての判断では
ないし、単に仲間・・・・イヤ主演女優のファンだからみたいなのもありますが、
まぁ捻くれております。
 
 中でも『花の乱』!
 これは凄かったですよ。史実との違いぶりもかなりでしたが^^;;(でも
そもそも確かめられることぢゃないし、意味合い的にはそんなにズレてない
《なんぢゃそりゃ》と思うんですが)、なにしろ凄いと思ったのは「オカルト」
に関する描写でした。
 人間、特に日本人がこんなに「科学的・論理的」な思考でもって動くように
なったのって非常に大胆な言い方をすればこの100年、もっと言ってしまえ
ば第二次大戦敗戦後なんぢゃないかと思うんですね。
 当然、《花の乱》の舞台となった室町時代末期なんて、迷信だの信仰だの
に囚われて生きていた人は今よりもっと多かったんぢゃないか、と。
 そういった「何かスーパーナチュラルなものに頼っている」人々の「心の動き」
というものをやや誇張しながらもキャラクター達の言動の中に自然に絡めて
描いていたのが『花の乱』だったと思います。本放送以来見返してないので
あくまで当時の印象ですが、見ていて「ああっ、そうだよな『科学的常識』という
ものが欠落した世界の話なんだもんな」と衝撃を受けました。

 この『花の乱』の脚本を担当していたのが市川森一

 そしてたまたま、全くチェックしていなかったのですが先日劇場で見た映画の
共同脚本が市川森一なのでした。

  

 「巧みな具合に結末がはっきりしない物語」が大好きな自分としては、
今作の「原作」である処の芥川龍之介『藪の中』と江戸川乱歩『陰獣』、
アガサ・クリスティオリエント急行殺人事件』は究極といってもいい
小説なんですが、そういう意味では今作『TAJOMARU』は原作への最大級
の裏切りと云うしかない・・・・筈なのですが。ですが。



 意外や、面白いと思ってしまったのでした。
 「いったい何が本当なのか」という原作のキモは後半のクライマックス
前まで引っ張りながらも結構簡単にスコーンっと流してしまって、己の
信ずるモノ(・・・・つーか女か^^;;)のために身悶えし続ける
多襄丸の姿が延々と続く訳です。何故か妙にシンパシーを感じてしまった
のでありました。
 結局、分かりやすい悪役を出してしまって全部そいつに物語の
汚い部分を担当させちゃってるとか、そいつのもっと上にいる巨悪は
そのままとかご都合主義な部分もわんさか在って結局は主演・小栗旬
ありきの「アイドル映画」となるんだろうけれど、原作の疑心・不安と
全く逆の方向でもって新たに物語を作り上げてしまったパワーはまぁ、
ちょっと褒めてあげたいかな、と。無理無理に関連付けるとすれば、
少々の^^;;歴史的史実などブッ飛ばしてでも乱れゆく世の中の混沌と
した人間模様を描ききった『花の乱』に通じる所があるのかなぁ、と
(あー無理矢理だ無理矢理だ)



 別にオカルト志向が伺える訳でもなく・・・・というかむしろ原作の
神秘的な部分を全て破壊しているんですが^^;;、そもそも共同脚本なの
でどこからどこまでを市川森一の仕事として考えていいのか分からない
んですが、でもやっぱりなんか凄いぞ市川森一、と思ってしまったの
でした。